こころのはじまり

心理学の歴史を学ぶ意義

心理学の歴史は心理学の観光ガイドブックのようなもの

ガイドブックを持たずに外国に出かけても面白くないと同様に、学問においても背景を知らないとその面白さは理解出来ない

この章の内容を念頭に置きながら各章を読み進めることが望ましい

心理学全体についてひととおり学んだ後で、この章を読み返すとまた違った世界が開けてくるだろう

心理学とは、人の感じること、考えること、行うことに関する学問

さまざまな分野があり、さまざまなアプローチがある

最終的には人間とはどのような存在であるのかという問に答えることを大きな目的のひとつとしている

この問は、随分昔から議論されてきたものである

身体と霊魂

現代の種の分類では、ヒトは動物の一種に分類されている

動物というのは、生物の中で植物に対する概念

古代ギリシャの哲学者アリストテレス(384-322B.C)は、感覚運動能力があるかないかで、植物と動物を分けている

18世紀の生物学者 C.リンネ(1707-78)も、感覚と移動能力で、植物界と動物界を分けている

感覚と運動能力がヒト(動物)にとって重要なようである

生きるということ

Animal(動物)ということばは、ラテン語の「生命・霊魂」表す Anima を語源としている

昔の人々は、ヒトを含めた動物には霊魂や生気が存在し、それが身体を動かしている原動力であると考えていた

生気が脱けると、動物は死んでしまうと考えていた

Anima にあたらすギリシャ語が、心理学(Psychology)の語源にもなっている Psyche

Anima も Pxyche もどちらも「息」という意味

息をすることが生命の本質と考えられてきた

日本語の「生きる」という言葉も、息から派生した言葉

魂の哲学

ギリシャの哲学者・ソクラテス(469B.C.頃-399B.C.)は、人間の魂を考察の対象とした

それ以前の哲学者は、自然を主な考察な対象としていたことから、ソクラテスは心理学の祖と呼ぶこともできる

ソクラテスの弟子プラトン(427B.C.-347B.C.)も、見たり触れたりする世界とは別に、直接知覚できない理想の世界(イデア界)があるとした

ヒトの魂は、肉体と独立してイデア界に存在すると主張・・・広義の物心二元論と呼ばれる

物体(身体)と独立して「こころ」が存在すると仮定している点が重要

プラトンは身体と心を異なるものと捉えたが、万学の祖と呼ばれるアリストテレスは、身体と心を一元的に捉える立場を取った

身体なしには心は存在なし得ない

アリストテレスの考え方は、心的機能を身体の特定部位と結びつけた(局在させた)点が画期的と言える

アリストテレスの考えで注意すべき点

  1. 感覚の統合といった心的作用は心臓で行われている
  2. 理性に関しては、神から与えられた能力とし、身体器官との関係は無い

古代の性格診断

人間の性質について考察した重要な学者

医者の立場から、人間の気質(性質)がどのような要素に由来するかについて理論を立てた

現在では否定されているものの、およそ 2000年間信じられてきた

体液占い

ヒポクラテスが四体液説唱え、ガレノスがその理論を発展させた

性格理論は、こころをさまざまな要素に分類し、身体特性と対応付けた点に意義がある

この考えを基礎にして、こころの問題と生理学的な要素が徐々に結びついていく

こころの在りか

ギリシャ・ローマの哲学者たちは、こころの在りかについてそれぞれ意見を述べている

ヒポクラテス、プラトン、ガレノスは、ヒトの心(霊魂)は脳髄にあるという考えを持っていた

一般的にはアリストテレスの理論が 18世紀まで信じられることになる

ラテン語、英語、日本語などさまざまな言語において、こころを指す言葉と心臓を指す言葉に重複が見られる

アリストテレスの理論は、一般に広く受け入れられていたと考えられる

氏か育ちか

我思う故に我あり

合理論は、理性の基礎が経験に先立って存在し、そこから様々な知識を導くことが可能であるという理論

デカルトは、主観的な解釈や獲得された能力を排除すると考えるという行為が残ることに気づいた

デカルトは精神と身体が相互作用すること、松果体がそれを司ると主張

タブラ・ラサ

経験論は、何も無い状態からスタートし、経験によって様々な知識体系が形作られると考える

J.ロックが『人間知性論』で述べたタブラ・ラサ(白紙)という概念に代表される

ヒトの感覚経験や意識経験を重視することになり、後の心理学での思想的基盤となった


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