文書の過去の版を表示しています。
2 感覚を測る
心理学の夜明け
こころについての学問は、19世紀にやっと科学として歩み始める
心理学の成立にあたっては精神物理学という学問が重要な基礎となった
精神物理学とは、精神(=こころ)の物理学
- 物理学とは、この世界における自然現象を数式によって記述・説明する学問
- 人間の感覚を物理学のように数式化することに挑んだ
1000g と 1005g
ドイツの解剖学者・生理学者の E.ウェーバーの行った研究
- 人が検出できる 2つの物体の差異の大きさは一定でない
多くの人は、50g と 55g の重さの違いはわかるが、1000g と 1005g の違いはわからない
外界世界での物理的な量(刺激量)の差異と、ヒトが感じる量(感覚量)の差異は対応していない
ウェーバーは、2つの刺激量が異なるものとして区別できる最も小さな差(弁別域)が、刺激量に応じてどのように変化するかを数式化した
2つの刺激(l1 と l2)を比較する時、弁別域(ΔⅠ)は比較する刺激(Ⅰ)に応じて大きくなる
$\frac{\Delta I}{I}=C$ と数式化できる
$C$ は刺激の種類によって異なるが、一定の値を取る
この法則は、重さ、明るさ、音の大きさ、線分の長さなどで成立することが知られている
ウェーバー自身は心理学者という意識は無かったが、この手法が現代心理学の基礎となっている
外の世界と内なる世界
ウェーバーの弟子で、ドイツの物理学者・哲学者のG・フェヒナーは、外的刺激と感覚の強さの関係を数式で記述しようと試みた
- フェヒナーの目的は、外的刺激を受けて変化したヒトの生理学的作用と精神的な作用(感覚)の関係を数量化する
- 内的精神物理学という
この時代では、ヒトの感覚受容器や脳の生理学的変化を観察することは困難だった
- 外的刺激と精神作用の関係を記述することを目指した
- 外的精神物理学という
フェヒナーは、弁別域を積み重ねたら 感覚の強さ になるのでは無いかと考えた
- ウェーバーの法則を積分を用いて発展させた
- 1860年に刺激量と感覚の強さの関係を数式として示した
フェヒナーが発見した法則は $S=k_{kog}I$ というもの
- 感覚量 %S% が強さ $I$ の対数に比例するというもの
- $k$ は定数lightbulb-usutamago.svg
ウェーバー・フェヒナーの法則
- 刺激量と感覚量の間には、線形では無く曲線的(対数)関係があることを明らかにした
こころの数式化